霧の濃い山にて、天狗修行中の男性に遭遇!??(ただ筑波山に登っただけの話)

普段ランニングすらしていない私だが、突然トレイルランニングがやりたくなった。

トレイルランニングとは、簡単にいうと山をランニングするスポーツである。

山に身を任せて走ってみたいと思った35歳、男性、中肉中背。自宅にあるワークマンウエアを装備して、平日早朝の筑波山にむかった。2020年、曇天の夏のことであった。

午前4時に起床、早起きした満足感にひたりながら30分しばし横になってボーッとする。決して二度寝ではない。

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朝焼けのオレンジがいつもより眩しく感じる、特別な一日になりそうだ。

一通り着替え終わり、外を眺める。

「休日の朝っぱらから、本当にこれから山に行くのか」

いつもの感情が襲ってきた。私は出不精なのだ。休日はなるべく自宅でゴロゴロしていたいと思っている。

しかし今年は2020年、キリが良い。たまには自分の体に反抗してみてもいいじゃないか。

そんなことをブツブツ言いながら家を出た。10年落ちのミニバンが山に向かって走り出した。

途中、セブンイレブンでオシャレにモーニングと洒落込んだ。略して「SOM」だ。気合のコーラと、おにぎり2つを食べて気分もやる気も満タン。

時刻は5:30、このまま帰宅してもう一度寝ても誰も文句は言わないし、個人的にはもういいかなと思っているが、今年は2020年、キリが良いので・・・。

シャシャーっと運転して1時間後、筑波山に到着した。

登山口付近の駐車場に入るが、問題発生。小銭が足らずコインパーキングに駐車できない。おにぎりをふたつも買ったせいだ。

完全にやる気を失ってしまい、このまま帰宅してもう一度寝ても誰にも文句は言われないが、今年は2020年、キリ・・・。

隣のコインパーキングに無事駐車することに成功。山に入る以前からトラブルに合うなんて、今日は本当に特別な一日になりそうだ。この田舎でコインパーキングをハシゴするなんて初めての経験だった。

駐車場には私以外にもすでに2、3台の車が停まっており、こんな平日の早朝から山に来るなんてどんな暇人なんだと思った。

薄々感じていたのだが、霧がすごい。濃霧という言葉が赤ちゃんに感じるくらい霧がすごい。とにかく周りが真っ白だ。しかし、これは登山あるあるで、頂上につく頃にはどうせ晴れて最高の景色が見れるんでしょ? 分かってるって。

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駐車場でパチリ。この駐車場もそこそこ高い場所にあるのだが、霧のせいでまったく山感が無い。

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あの世まで繋がっていそうな登山口。メガネは眼鏡市場で買ったものだ。

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ちょっと登った場所でパチリ。山のパワーを全身に浴びているポーズ。
いよいよ、人生初のぶっつけ本番トレイルランが始まった。ゴツゴツした岩をひょいひょいと飛び越えながら、軽快に頂上を目指す!

・・・・・

はずだった。

現実は厳しいものだ。自動販売機の当たり判定くらい厳しいものだ。

まったくひょいひょいではない。高く、不安定な、終わりのない階段を小走りで永遠に登り続けるような感じ。簡単に言うと、片足スクワットを交互にずっとやっている感じ。

おまけに、足元は前日の雨で完璧にぬかるんでいる。

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無敵だと思っていた地下足袋も、濡れた岩の上はめちゃくちゃ滑るの巻

開始5分でリアルに心臓が爆発しそうだ。尋常じゃなく脈打つ心臓の鼓動を感じながら「これはヤバい」と思った。トレイルランを登山の小走りバージョンくらいにしか思っていなかった私は完全にアホである。

そんなこと考えている間にも、さっきスタート地点で爽快に追い抜いたおじいさんが後ろから迫っている。私は葛藤した。

まだ10メートルも登ってないし、このまま引き返して帰宅して寝ても誰にも文句は言われない。しかし、今年は2020・・・。

早々にトレイルランは諦めて、ゆっくり登山に変更した。人間諦めが肝心である。

ゆっくり10メートル登っては休憩し、またゆっくり10メートル登る。それでも心臓はバクバクで、トレイルランやってる人ってすげーなと思った。

しばらく登っていて気づいたことをひとつ言います。

登山あるある
「大きな木を見つけると、手を当てて上を見上げがち」

そんなしょうもないことを考えながらまた登っていく。

ところで、有名っぽいどこぞの登山家の人が「山を登ると無心になって、自分と向き合うことができる」と言っていた。

とんでもない。そんなことができるのは熟練の登山家だからであって、ズブズブの素人だと無心にすらなれない。

歩けば「疲れた」という言葉が浮かんでくるし、止まると「蚊」が襲ってきて鬱陶しいとイライラする。蚊よ、血を吸うついでに疲れも吸ってくれ。

午前8時前、頂上までもうちょっとというときに、それは聞こえてきた。

ブォオーー! ブォオーー! という、ほら貝の音。

霧がかった山中、周りには人っ子一人いない。そして、めちゃくちゃ座りやすそうな大木。

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天狗だ。

絶対に天狗の仕業だ。天狗が私をさらいに来たんだ。。。

ビクビクしていると、その辺に散歩に行くような普段着のオジサンが山道を下りてきた。しかし、首には大きなほら貝を下げている。おそらく人間ではないだろう。

するとその瞬間、私の体は金縛りにあったかのように動かなくなった。彼はすれ違いざまに頭をすっと下げ、私の横を通り過ぎていく。

どれくらい時間がたっただろうか、気づくと体が自由に動く。慌てて後ろを振り向くと、もうすでに姿は無かった。

山は不思議な事が起こる。

 

みたいなことを妄想しながら歩くと、登山は楽しいぞ。

天狗の大木から10分ほど歩くと、筑波山一の奇岩「弁慶の七戻り」に到着。

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今にも崩れ落ちそうな岩に、あの弁慶が七回も通るのを躊躇したという伝説の場所である

ここでよく「俺は100戻りー!」とか言ってふざける奴がいますが、私です。

確かに弁慶の七戻りは怖い、もしかしたらこの瞬間に崩れてしまうのではないか、という恐怖もあった。しかしこのときは、後ろをブンブン飛んでいるハチのお化けみたいな虫のほうが怖かった。

ハチのお化けからダッシュで逃げ、疲れたので岩に手をついて休もうと思ったら、今度はクモのお化けみたいな虫がいた。

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わからないので調べると、ザトウムシという虫らしい。調べてもやっぱりわからなかった。

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ヒゲのパワーアップキノコ似のキノコ

これを食べれば元気になれるだろうか。どうやら何者かが食べた形跡がある、健康でいることを祈る。

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山頂付近にいたコクワちゃん。寂しいので相棒として連れて行くことにした。

10数メートル登ると、やっと山頂に着いた。

筑波山は標高はそこまでではないが、頂上からは関東平野を一望することができる。340度くらいのパノラマは、今までの疲れを吹き飛ばしてくれる絶景だ。

と晴れた日なら誰もが思うことだろう。

ちなみに、この日の頂上からの風景はこちら。

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真っ白

なーんにも見えない。自分が今どこにいるのか、どれくらいの高さにいるのかもわからない。

まあ、登っている最中から薄々ね、薄々アレかなとは思っていたけど、ここまで薄々とは思いもしなかった。

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コクワもショボン

頂上についたときには、トレイルランニングがしたいから山に来たんだという理由は一切頭に残っておらず、とっとと下山してコーラ飲みたいと思うのみであった。

帰りに山の自販機で、リアルゴールドを買った。160円。

 

コーラじゃないんかい。